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Mt Victoria


「レイクルイーズ」カナディアンロッキーを代表する観光名所。湖正面からの景色はあまりにも有名だ。だが湖を囲む周りの山になると、知名度は一気に下がる。
写真にも必ず載っている湖の奥にひときわ多くの雪と氷河を持つ山。レイクルイーズの美しさはこの山があってこそだ。名前を「ビクトリア」という。イギリスのビクトリア女王の名前が付けられている。ちなみに湖の名前の由来はビクトリア女王の娘ルイーズ姫からきている。

この山には見た当時からいつか登りたいと思っていた。しかし不定休の私の仕事ではなかなか他の人と休みが会わず、機会に恵まれない。しかしチャンスは7月の終わりにやってきた。
師匠のトシさんを代表に4名でレイクオハラから入っていった。やはりオハラは大人気の場所だけに、この日も朝から駐車場は混雑している。止まっている車のナンバープレートを見てみると、カナダのものにまざってアメリカのナンバープレートも多い。(もちろんカナダナンバーの車の中にもレンタカーは多い。)
ここから「レイクオハラ」まではシャトルバスで行く。われわれは予約をしてきていたのですぐに乗れたが、キャンセル待ちの人たちも多くバス停に集まっていた。

バスを降りてからは準備を整えまずは「レイクオエサ」を目指す。一時間少々の楽しいハイキング途中振り返ると周りの景色がとても美しい。トレイルは整備が行き届いていて、歩くのも簡単。途中小さな滝の脇で一回休憩を取ったが、苦しいからというよりも、美しいからつい足が止まったという感じだった。

「レイクオエサ」インディアンの言葉で「氷」を表す。水が冷たいせいなのか、すぐ脇にある氷河から氷が降ってくるからなのか、理由はよく分からない。だがこの独特の色の湖を見れただけでもここに着てよかったと思える。
湖のすぐ脇には、平らな岩が転がっていて食事をするにはもってこい。ここで昼食&休憩で一時間ほどゆっくり時間をとった。なんせこの後今日の核心ポイント「アボットパス」が待っている。

「アボットパス」1800年代から多くの登山家、探検家によって使われてきた。
道は瓦礫がずっと敷き詰められている。足元に気をかけていないとすぐ足をとられる。そして夏場でもここには雪が多くあり途中何回か雪の上をトラバースした。
結局この500mの標高差の瓦礫場を3時間ほどかけて登った。
登りきるともう目の前には本日の宿泊所、「Abbot Pass Hut」が見える。標高2925mに在り、周りの山の頂上も近く見える。また歴史もとても古く、1922年から存在している。造りは石造り。足元には氷河。建物の裏には「ビクトリア」が在り、本当に浮世離れした場所。居るだけで幸せになってしまう。それなのに今日の宿泊者はなんとわれわれ4人だけ。途中で「昨日は20人ぐらい泊まっていた」と聞いていただけにとてもラッキー。明日の登山もうまくいくのではと、否が応でも気分は高まる。
夕食はカレー。プロパンガスを利用できるので炊飯も楽だし、夜も明るい。水は雪を溶かして取るが、ストーブに載せればすぐに出来上がる。ここでは食料品と寝袋だけ持ってくればとりあえず生活できる。


(上の2枚)(上)アボットパスへの登り。
と、アボットハット。
(ここ)山の稜線から朝日が昇る。
翌朝は4時半おきの5時半スタート。みんなヘッドランプをつけて登り始める。最初はまだ凍っている場所が多い岩場をひたすら登る。そして雪のセクションこの辺りで朝日が昇り始める。周りの山が朝日に染まっていく姿はとても美しい。ついつい見とれてしまう。
ここでノーマルルートで一番の難所「The Sickle」を超える。「sickle」とは英語で「鎌」の意味。深くえぐれた地形になっていて左右は60度ぐらいの絶壁。ここを慎重に超え、後は雪と岩を延々と越えていく。
11時くらいに山頂(3464m)に到着。眼下には、見知っている山や、湖。遠くには氷原まできれいに見える。岩の間に隠してある、登頂者ノートに名前を書き込み下り始めた。

下りも長く途中雪も降ったりして、シャトルバスに間に合うかと一瞬あせりもしたが、余裕のゴール。バス停につくころには雨のせいでみんなずぶ濡れになってしまっていた。下りのバスは予約が要らないため好きなのに乗ることができる。やはり予約制にしてもほとんどの人が予定がずれそれに乗れないのだろう。特に今日は雨のせいもあって少し遅いこの時間のバスはとてもすいている。
帰り道はみんな疲れているのだろう言葉も少ないが、満足しているのは分かる。翌日からは日常生活に戻ってしまうが、たまに仕事で行く「レイクルイ−ズ」で「ビクトリア」を見るとあの日の感動が戻ってくる。又いつか登ってみたい山だ。